とよブロ

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日産、契約社員の正社員化に見る裏側

もくじ

❚日産の契約社員→正社員化は両手を上げて喜べる内容ではないはず 

つい先日、日産が全契約社員を対象に正社員化を行うという報道があり、業界を沸かせました。

 

同じ自動車業界で働く人達に取ってはとても興味を引かれる内容だっただけに、その詳細内容があちこちで噂されていましたが、どうやら生産工場で働く期間工や派遣社員を対象としたものではないらしいのです。

 

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確実に裏が取れている情報ではありませんが、正社員化の内容はどうやら事務職の契約社員のみが対象となる様子。工場で勤務する作業員は対象とはならないという情報です。

 

仮に工場作業員を正社員化するにしても、必ずしも喜ばしい内容になるとは思えません。それはほぼ確実に年収は下がるだろうからです。

 

日産で働いた事がないので詳細な比較材料がないのですが、自動車業界の社員には細かいランク制度が存在します。参考までに同じ自動車業界であるダイハツ九州の新卒社員や中途採用社員の例で言うと、一番最下層ランクの社員の手取りは月10万円を下回ります。(残業や休日出勤日数などにもよりますが)

 

福利厚生がない訳ではないのですが、福利厚生の中でも特に単身者にとっては重要となる住居手当。個人で契約している賃貸等に住んでいる場合の家賃補助的な福利厚生は確かなかったはずです。

その変わりに会社が用意している寮に住めるという権利が条件付きであったはず。

 

例え単身向けの寮に住めたとしてもその大半は水回り(風呂、トイレ)共同の簡易施設です。この水回り共同施設というのは人によってはかなりの地獄となります。

入寮者の皆が皆、モラルある方ばかりではありませんからね。

 

そう考えると、期間社員はランクが下の正社員よりも月の収入が良く、寸志的な満了金というのも支給されます。派遣社員の場合は条件付きの場合もありますが、家賃補助や家賃無料のワンルーム賃貸に住める場合もあり、給与も割といい額が支給されます。

 

こうなると、仮に工場作業員が無条件で正社員化されたとしても、メリットとしては不安定な無条件継続雇用という権利くらいでしょうか。

確かに社員として勤務を続けていけば昇給の可能性もありますが、可能性としてはかなり低くまた、昇給額も微々たるものとなる場合が大半です。

 

反面、期間工や派遣社員、契約社員は契約上雇用期間に定めがあるので、状況次第で雇用が打ち切られてしまうリスクがあります。

その為、非正規で自動車業界で働きに来る人達の多くは、期間限定で稼ぎに来る目的で勤務している方がほとんどです。

 

今回の日産の事務職の契約社員の正社員化という情報は詳細が未だ掴めないのですが、メディアやSNS等で騒がれている様な好材料ではないはずだと言う事です。

 

❚日産の件を受けて、トヨタはどうか

日産が一部の契約社員を正社員化するという報道を受けて、自動車業界には少なからず動揺が起きている事でしょうが、トヨタでも同じ様な動きはないのか。

 

ハッキリ言って、現時点で同様の動きがあるという情報は全くありませんw

 

むしろ個人的には自動車業界において工場作業員を無条件で全て正社員化する事は業界を破滅させる事に繋がると思っています。それは何故か。

 

自動車業界の生産工場の作業員というのは、基本的に体力勝負です。

工程によって若干の差はありますが、どこもかしこも勤務中に倒れそうになるくらいにキツイ作業が繰り返し行われています。

 

若い頃は作業がこなせていても、歳を重ねる毎にパフォーマンスは確実に低下していくでしょう。もし工場作業員を全正社員化してしまうと、容易に雇用を打ち切る事が出来なくなり、結果的に高い年齢層の人達で溢れかえってしまいます。

 

高齢となった作業員は以前までのパフォーマンスを発揮する事が出来なくなるので、生産性は当然落ちるでしょう。落ちるどころか、これまで同様の生産体制が組めなくなる可能性の方が高いです。

 

だからこそ自動車業界では常に人の入れ替えに力を注いでいる仕組みが敷かれており、契約期間に定めのある雇用体制を一定枠維持する事で、生産性の安定化を図っているのだと思います。

 

人道的な意見としては雇用を大切にしていないと言われるかも知れませんが、経営観点から考えると、企業を維持していく為に、言わば当然の仕組みと言えるでしょう。

まぁ業界内部の改革はもっともっと必要だと感じる場面は未だに各業界で沢山あると思います。高齢になった役職の方々が特になにする訳でもなく、一日中工場内を散歩しているだけ。会議という名目の雑談を繰り返しているだけという人材は至る所に存在していますからね...。

 

長年会社に尽力してくれた人材だから容易に雇用を切る事が出来ないという事だけでは、企業の成長に取ってマイナスにしかならない事もあり、今後益々過酷になる経済情勢においてやはり内部の思い切った構造改革というのは多くの企業で必要となって来るのではないでしょうかね。